30秒でわかる結論
退職代行選びは「誰が運営しているか」がすべてです。運営元が弁護士・労働組合・民間業者のどれかによって、法律上できることが変わります。
- 退職の意思を伝えてもらうだけでよい → 民間業者でも可(1〜2.5万円)
- 有給消化・退職日の調整も頼みたい → 労働組合運営(2.5〜3万円前後)
- 未払い残業代・慰謝料の請求までしたい → 弁護士(5〜10万円程度)
迷ったら、交渉ができて料金も抑えられる労働組合運営を基準に検討するのが実務的です。
退職代行は「運営元」でできることが法律で決まる
退職代行サービスの広告は似たような文言が並びますが、法律上できることは運営元の類型で明確に分かれています。根拠になるのが弁護士法72条です。弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関する代理・和解などの法律事務を業として行うことは禁止されています(いわゆる非弁行為)。
退職の意思を「伝える」だけなら、本人の使者として動くにすぎないため民間業者でも可能です。しかし「有給を消化させてほしい」「退職日を今月末にしてほしい」と会社に求めて条件をすり合わせるのは交渉であり、民間業者がやれば非弁行為にあたるおそれがあります。会社側に「本人以外とは話さない」と拒否されると、民間業者はそれ以上動けません。
一方、労働組合には憲法28条と労働組合法で保障された団体交渉権があり、組合員のために会社と交渉できます。弁護士はさらに、未払い賃金や慰謝料の請求、訴訟対応まで含めて代理できます。まずはこの区分を頭に入れてください。
| 運営元 | 退職意思の伝達 | 有給・退職日の交渉 | 未払い賃金・慰謝料請求 | 料金相場 |
|---|---|---|---|---|
| 民間業者 | ○ | ×(非弁行為のおそれ) | × | 1〜2.5万円 |
| 労働組合 | ○ | ○(団体交渉権) | △(交渉まで。訴訟は不可) | 2.5〜3万円前後 |
| 弁護士 | ○ | ○ | ○(訴訟対応も可) | 5〜10万円程度+成功報酬 |
なお、そもそも退職自体は労働者の権利です。期間の定めのない雇用であれば、民法627条1項により解約の申入れから2週間を経過すれば雇用は終了します。会社の承認は要件ではありません。退職代行は「言い出せない・話が通じない」状況でこの権利行使を代わりに進めてくれるサービスだ、と位置づけると選び方がぶれません。仕組みの詳細は退職代行の流れで解説しています。
チェックポイント1:運営元を特定商取引法の表記で確認する
「労働組合と提携」「弁護士監修」という表現には注意が必要です。提携や監修は、実際に対応するのが誰かを保証しません。確認すべきは、公式サイトの特定商取引法に基づく表記や運営者情報です。
- 労働組合運営なら、組合名(「○○ユニオン」など)が明記され、依頼時に組合加入の手続きがある
- 弁護士対応なら、法律事務所名と所属弁護士名が確認できる
- 株式会社のみの表記で「交渉できます」とうたっている場合は避ける
「弁護士監修だから交渉も安心」という書き方は、監修(書面のチェック等)と代理(実際に会社とやり取りすること)を混同させる典型的なパターンです。
チェックポイント2:料金は「総額」で比較する
基本料金のほかに、追加費用の有無を必ず確認します。よくある内訳は次のとおりです。
- 雇用形態による料金差(アルバイト・パートは安く、正社員は高い設定が一般的)
- 労働組合の場合の組合費(数千円程度が別途かかることがある)
- オプション扱いの深夜対応・書類作成・転職サポート
相場から極端に外れて安いサービスは、運営実態や対応範囲を確認してからにしてください。退職に失敗して二重に費用がかかるほうが高くつきます。
チェックポイント3:対応範囲を具体的に確認する
「退職成功」がゴールではなく、退職後に必要な書類が揃ってはじめて完了です。依頼前に、次の項目に対応してもらえるか確認しましょう。
- 有給休暇の消化を会社に求められるか(労働組合・弁護士のみ)
- 離職票・源泉徴収票など退職後の書類の受け取りを段取りしてくれるか
- 貸与物(PC・制服・保険証)の返却方法を案内してくれるか
- 退職金や未払い給与の扱いをどこまで求められるか
チェックポイント4:連絡手段と対応スピード
多くのサービスはLINEでの無料相談から始まります。確認したいのは、即日対応の可否(今日依頼して今日会社に連絡してもらえるか)、深夜・早朝の連絡がつくか、実行後の報告がどのタイミングで来るか、の3点です。即日退職を望む場合は、依頼のタイミングと会社への連絡時刻の関係を最初の相談で聞いておくとすれ違いがありません。
チェックポイント5:返金保証と、その条件
「退職できなければ全額返金」を掲げるサービスは多いですが、返金の条件(本人都合のキャンセルは対象外、など)は規約で異なります。契約前に返金規定の原文を確認してください。逆に、返金保証が一切ないサービスは慎重に判断すべきです。
チェックポイント6:退職後のフォローと転職サポート
退職代行の利用者は、次の仕事が決まる前に辞めるケースが少なくありません。転職サポートや、失業給付・社会保険の手続き案内まで面倒を見てくれるかは、料金差以上の違いになることがあります。転職活動の進め方は転職エージェントの活用法も参考にしてください。
労働組合運営のサービス例
ここまでの基準で「交渉が必要になりそうだが、弁護士費用までは掛けたくない」場合の受け皿になるのが労働組合運営のサービスです。例として、合同労働組合toNEXTユニオンが運営する退職代行は、男性向け・女性向けに窓口が分かれており、料金はいずれもアルバイト・パート(社会保険未加入)18,800円、正社員・契約社員・派遣社員21,800円(税込・別途組合費1,000円、2026年8月時点)です。
弁護士を選ぶべきケース
次のいずれかに当てはまる場合は、料金が高くても最初から弁護士に依頼してください。
- 未払い残業代・退職金など、金銭の請求をしたい(金額によっては費用を上回って回収できます)
- パワハラ・セクハラの慰謝料請求を考えている
- 会社から損害賠償をちらつかされている、訴訟に発展しそう
- 役員・業務委託など、労働者としての退職ではない立場からの離脱
これらは法律事務そのものなので、労働組合でも対応しきれません。金銭請求の予定がなければ労働組合運営、あれば弁護士、が費用対効果の分かれ目です。
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よくある質問
退職代行サービスは違法ではないのですか?
退職の意思を本人に代わって会社に伝えること自体は違法ではありません。ただし弁護士法72条により、弁護士でない者が報酬を得て会社と交渉することは禁止されています(非弁行為)。民間業者は意思の伝達まで、労働組合は団体交渉権の範囲で交渉まで、弁護士は損害賠償請求などの法律事務まで対応できる、という区分を理解して選べば問題ありません。
退職代行の費用相場はどれくらいですか?
運営元の類型によって異なります。目安として民間業者は1〜2.5万円、労働組合が運営するものは2.5〜3万円前後、弁護士は5〜10万円程度(未払い賃金請求などは別途成功報酬)が相場です。極端に安いサービスは対応範囲や運営実態を必ず確認してください。
有給休暇を消化してから辞めたい場合はどこに頼むべきですか?
有給消化や退職日の調整は会社との「交渉」にあたるため、民間業者では対応できません。団体交渉権を持つ労働組合が運営するサービスか、弁護士に依頼してください。料金と対応範囲のバランスでは労働組合運営のサービスが選択肢になります。
未払い残業代も一緒に請求できますか?
金銭の請求は法律事務にあたるため、対応できるのは弁護士だけです。未払い残業代・退職金・ハラスメントの慰謝料などを請求したい場合は、退職代行も含めて弁護士に依頼するのが確実です。労働組合は団体交渉として支払いを求めることはできますが、訴訟まで見据えるなら弁護士一択です。
退職代行を使うと転職で不利になりますか?
退職代行の利用が転職先に自動的に伝わる仕組みはありません。転職活動で聞かれるのは退職理由であり、伝え方を整理しておけば通常は問題になりません。前職の会社が応募先に個人情報を勝手に伝えることは、個人情報保護の観点からも原則できません。