30秒でわかる結論
看護師本人の回答では、払われていない労働が「ない」人は31.6%。約7割に不払い労働があり、中身は記録57.9%・患者対応42.3%・情報収集41.9%です(日本医労連ほか「2022年 看護職員の労働実態調査」、35,933人)。始業前30分以上の時間外は日勤で53.2%(同2017年調査)。
労働時間かどうかは、病院の指示で動いている時間かどうかで決まる、というのが裁判所の基準です。就業規則に何と書いてあるかではなく、実態で決まります。始業前の情報収集が業務上求められていれば労働時間、待機も仕事から解放されていないなら労働時間です。労基署の是正で病院が8,548万円・10.5億円を払った事例があります。
払われていない残業代は、3年さかのぼって請求できます。電子カルテのログイン時刻など客観記録を手元に残し、転職先には「時間外は自己申告か、端末ログか」を先に聞きます。
看護師の「払われていない時間」はどこにあるか
看護師の残業は、求人票の「月平均残業◯時間」には出てこない場所に偏っています。始業前の情報収集、終業後の記録、休憩中の患者対応、自宅での持ち帰り仕事、委員会と研修です。看護職員本人の回答でこの実態を数えた調査が、日本医労連・全大教・自治労連の「2022年 看護職員の労働実態調査」(2023年5月公表、回答35,933人、2022年9月実績)です。
この調査で、賃金が支払われていない労働(不払い労働)が「なし」と答えた人は31.6%でした。裏返すと約7割に不払い労働があり、月10時間以上が14.5%、30時間以上が1.7%です。回答者21,649人分の不払い時間を合計すると156,937時間、時給2,000円で換算すると約3億1,387万円になると調査は報告しています。
| 不払い労働の主な業務(3つまで) | 回答割合 |
|---|---|
| 記録 | 57.9% |
| 患者への対応 | 42.3% |
| 情報収集 | 41.9% |
| 各種委員会 | 15.4% |
| 持ち帰り仕事 | 11.8% |
| 研修 | 9.8% |
| 出典:日本医労連・全大教・自治労連「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)。回答者の勤務先は国立・公立・公的病院が約7割で、民間の中小病院は少ない。 | |
1位の「記録」は職場によって重みが違い、訪問看護では74.1%、介護施設で65.3%、一般病棟で61.1%の人が不払い業務として挙げています。訪問の合間や帰所後に書く記録が、そのまま無給になっている構図です。
始業前の30分は、半数以上の人が毎日働いている
始業前の時間外労働を勤務形態別に数えたのは、同じ医労連の2017年調査(2017年11月公表、回答33,402人)です。始業前に30分以上働いている人は日勤で53.2%、2交替で58.5%。60分以上の人も日勤で8.9%、2交替で20.0%います。
| 勤務形態 | 始業前30分以上 | 始業前60分以上 |
|---|---|---|
| 日勤 | 53.2% | 8.9% |
| 準夜 | 60.4% | 15.6% |
| 深夜 | 54.7% | 10.5% |
| 2交替 | 58.5% | 20.0% |
| 出典:日本医労連「2017年 看護職員の労働実態調査」(回答33,402人)。始業前の時間外を勤務形態別に示した数値は2022年調査にはない。 | ||
病院が答える「月4.8時間」と、本人が答える「月5時間以上が64.1%」
施設側の数字も見ておきます。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月公表、回答3,502病院)で、病院が回答した看護職員1人あたりの月平均超過勤務時間(2025年9月)は平均4.8時間でした。分布は1〜4時間未満が34.9%で最多、4〜7時間未満22.7%、7〜10時間未満13.7%、10〜15時間未満8.9%、20時間以上は0.8%です。
一方、医労連の2022年調査で看護職員本人が答えた1か月の時間外労働(不払い分を含む実際の時間)は、5時間以上が64.1%、20時間以上が19.4%、60時間以上が0.7%です。調査年も対象も違うので数字をそのまま並べて差を計算することはできませんが、病院が集計する超過勤務は申告された分だけであり、本人が働いたと認識している時間とは別の数字だ、という点は押さえておく必要があります。
この差が生まれる仕組みのひとつが、時間外の管理方法です。島根県が県内53病院に行った「平成25年度 県内病院における看護職員夜勤実態調査」(2014年6月公表)では、時間外労働の管理方法は自己申告制が53%、タイムカードが34%、上司の現認が25%でした(複数回答)。同じ調査で、病院が挙げた時間外労働の主な要因は看護記録等が81%、患者対応が72%、引継業務が25%です。1県・1時点の古い調査ですが、「申告しなければ存在しないことになる時間」が記録と患者対応に集中している構造は、医労連の本人回答と一致しています。
なお、病院には、勤務時間を客観的な方法で記録する義務が法律で課されています。自己申告だけで管理している職場は、この義務との整合も問われる立場にあります。
労働時間とは何か:「病院の指示で動いている時間」が裁判所の基準
法律上、休憩を除いて1日8時間・1週間40時間を超えて働かせることは原則としてできません。では「働いた」時間とは何か。法律に定義はなく、最高裁の判例が基準を示しています。
最高裁は三菱重工業長崎造船所事件で、労働時間とは働く人が使用者(病院)の指示のもとに置かれている時間のことで、労働時間かどうかは、雇用契約や就業規則の定めにかかわらず客観的に決まるとしました。そのうえで、使用者から義務づけられ、またはやらざるを得なかった準備の時間は、常識的に必要と認められる範囲で労働時間に当たるとし、作業服・保護具の着脱などの時間を労働時間と認めています。
看護師の前残業に当てはめると、始業時刻に申し送りが始まり、それまでに受け持ち患者の情報収集を済ませておくことが事実上求められ、上司もそれを前提に業務を組んでいるなら、「やらざるを得なかった準備の時間」に当たると考えられます。就業規則に「始業前の情報収集は業務ではない」と書いてあっても、客観的に見て業務に必要で、やらなければ仕事が回らない状態なら、その定めで労働時間でなくなるわけではない、というのがこの判例の意味です。
委員会・研修・勉強会
委員会や研修は、参加が業務命令であるか、参加しないと評価や配置に影響する、欠席に理由を求められる、といった実質的な強制があれば労働時間に当たると考えられます。完全に自由参加で、不参加による不利益がない勉強会は労働時間に当たらないというのが一般的な理解です。医労連の2022年調査では、不払い労働の業務として各種委員会を15.4%、研修を9.8%の人が挙げています。「自由参加」という名目と、実際に欠席できるかどうかは分けて見る必要があります。
休憩:電話番をしながらの休憩は休憩でない
法律では、勤務が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上の休憩を勤務の途中に与え、その時間は自由に使わせることが病院に義務づけられています。ナースコールやPHSに応答する義務を負ったまま休憩室にいる時間は、自由に使えていないので休憩ではなく労働時間に当たる、というのが判例の一般的な理解です。
この「自由に使えるか」の考え方を示したのが、大星ビル管理事件の最高裁判決です。実際に作業をしていない仮眠時間でも、呼ばれたら対応する義務がある状態なら仕事から解放されているとはいえず、労働時間に当たるとして、仮眠室で待機して警報や電話に直ちに対応することを義務づけられていたビル管理員の仮眠時間を労働時間と認めました。
実態として休憩が取れているかは、当事者調査にはっきり出ています。医労連の2022年調査で休憩が「きちんと取れている」人は日勤24.1%、準夜21.8%、深夜28.0%、2交替夜勤26.8%でした。日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」(2026年3月公表、会員4,430人回答)では、2交代の規程上の休憩は平均116.7分ですが、実際に取った休憩は90〜120分未満が32.9%で最頻、3交代では実際に取った休憩が60分未満の人が62.6%です。規程と実際の差は、そのまま「払われていない労働時間」の候補になります。
「管理職だから残業代はない」と言われたとき
法律には、経営側に立つ管理職(管理監督者)には労働時間・休憩・休日のルールを適用しない、という決まりがあります。ただし、肩書きが師長や主任であることと、法律上の管理監督者であることは別です。経営に関わる権限、出退勤の自由、地位にふさわしい待遇があるかで判断され、それが伴わなければ師長でも残業代は出ます。後述のアルデバラン事件でも、判例解説によると、裁判所は看護師が管理監督者に当たらないと判断しています。また、深夜の割増賃金は管理監督者でも支払われるというのが一般的な理解です。
事例1:三田市民病院(兵庫県)— 早出の準備時間が計上されていなかった
神戸新聞(2022年11月29日)の報道によると、兵庫県の三田市民病院で、看護師・医療技術者392人の時間外手当の未払いが判明し、病院は224人に計約8,548万円を支払いました(残り168人分は調査中と報じられています)。対象期間は2021年7月から2022年4月の10か月で、最も多い人は587時間分・約117万円でした。
原因は、「早出残業」など始業前の準備時間を労働時間に含めていなかったことです。報道によると、2022年1月に伊丹労働基準監督署が出勤簿などの台帳とタイムカードの食い違いを指摘し、6月に再指導。病院は電子カルテの起動時刻などを基に時間を算定し、8〜10月に支払いました。
この事例から読めることは2つあります。ひとつは、労基署が「台帳(申告ベースの記録)」と「タイムカード(客観記録)」の食い違いを見ている点。もうひとつは、電子カルテの起動時刻が労働時間の算定根拠に使われた点です。看護師が毎朝カルテを開く時刻は、サーバーに残っています。
事例2:大崎市民病院(宮城県)— 算出方法の誤りと過少申告で10.5億円
Business Journal(2024年9月18日)の報道によると、宮城県の大崎市民病院では、医師・看護師らの時間外手当が不適切な算出方法(一部の手当を月給に含めずに計算)で支給され、時間外労働時間の過少申告もありました。古川労働基準監督署が2020年3月に遡る支払いを求めて是正勧告し、労基署の算定では約10.5億円。病院は約2.3億円を支給し、残り約8億円は経営状況を理由に支払わない意向を示したのち、その後分割で支払う意向を表明した、と記事は伝えています。
ここでの論点は、時間の過少申告だけではなく単価の計算です。残業代の単価は、家族手当・通勤手当など一部の手当を除いて、基本給だけでなく他の手当も含めて計算するのがルールです。給与明細の「時間外手当の単価」が基本給だけから計算されていないかは、自分でも確認できる点です。
事例3:訪問看護のオンコール待機(アルデバラン事件)
判例解説(@DIME)によると、横浜地裁の判決(アルデバラン事件)は、訪問看護ステーションに2016年7月から2018年12月まで在籍した約65歳の看護師が未払い賃金1,000万円超を請求した事件で、緊急呼び出し用の携帯電話を常に持ち、呼ばれれば駆けつける「緊急看護対応業務」の待機時間が無給だった点について、裁判所は待機時間を労働時間と認め、管理監督者にも当たらないとして、残業代約1,055万円の支払いを命じたと解説されています(判決原文は本記事執筆時点で裁判所サイトから確認できていないため、解説記事の内容として紹介します)。
前述の大星ビル管理事件の考え方(仕事から解放されているか)を訪問看護の待機に当てはめた判断と理解できます。待機中に飲酒や遠出ができない、着信に即応する義務がある、出動までの時間が決められている、といった制約が強いほど、労働時間と評価される方向に働きます。
「出動しなくても待機は負担」の実数
待機の負担は、出動したかどうかとは別にあります。医労連の2022年調査で病棟以外の看護職員に夜勤携帯待機の回数を聞いた結果が次の表です。
| 1か月の夜勤携帯待機回数 | 割合 |
|---|---|
| 0回 | 40.1% |
| 1〜2回 | 13.5% |
| 3〜4回 | 14.2% |
| 5〜6回 | 14.1% |
| 7〜8回 | 10.7% |
| 9〜10回 | 4.7% |
| 11回以上 | 2.7% |
| 出典:日本医労連・全大教・自治労連「2022年 看護職員の労働実態調査」(病棟以外の看護職員)。同調査で、待機時に実際に出動した回数は0回が63.8%、1〜2回が26.8%。 | |
待機時に実際に出動した回数は0回が63.8%です。つまり待機の大半は「呼ばれなかった夜」ですが、携帯を手放せず飲酒も遠出もできない状態は、呼ばれなくても続いています。待機手当の水準は本記事で使った調査にないため書きませんが、転職先には「待機1回あたりの手当」と「出動した場合の時間外の扱い」を分けて聞く必要があります(後述の表)。
時効は3年。証拠は在職中に自分の手元へ
払われていない残業代は、3年さかのぼって請求できます(退職金は5年)。給料日ごとに個別に時効が進むので、たとえば3年前の給与分は今月で消え、来月にはその翌月分が消えていきます。退職後でも請求できますが、時間が経つほど請求できる月が減る仕組みです。
割増率は、時間外が通常の賃金の2割5分以上(1か月60時間を超えた部分は5割以上)、午後10時から午前5時までの深夜労働が2割5分以上です。時間外かつ深夜なら両方が重なります。
残しておく記録
- 電子カルテのログイン・起動時刻と最終操作時刻:三田市民病院の算定根拠に使われたのがこれです。自分で記録を取り出せない場合も、日々の出退勤をメモやスマートフォンの位置情報履歴で控えておきます。
- PHS・業務端末・ナースコールの履歴:休憩中や終業後に応答した事実が残ります。
- 勤務表(シフト表)と実際の出退勤時刻の対照:月ごとに写真で保存します。
- 指示や依頼のメッセージ:グループチャットやメールで「◯時までに情報収集を」「委員会は時間外に」といった指示があれば、スクリーンショットで保存します。
- 給与明細:時間外手当の時間数と単価。単価が基本給のみから計算されていないか(大崎市民病院の論点)を見ます。
労働基準監督署に相談しても、相談したことを理由に解雇や不利な扱いをすることは法律で禁止されています。ただし、本記事は一般的な制度と公開事例の説明であり、個別の事案で請求できる金額や見通しは、弁護士か労働基準監督署に相談してください。在職中に職場と話し合う場合の段取りは退職交渉の進め方とスケジュールも参考になります。
転職先で確かめること
いまの職場の未払いを取り戻すことと、次の職場で同じことを繰り返さないことは別の作業です。次の表は、面接や職場見学で確認する項目と聞き方、そして全国の実態(比べる基準)を並べたものです。求人票の「残業月◯時間」だけでは、ここに挙げた項目はひとつも分かりません。
| 確認項目 | 聞き方 | 全国の実態(比べる基準) |
|---|---|---|
| 時間外の打刻方法 | 「時間外は自己申告ですか、タイムカードや端末ログですか。申告と打刻がずれたときはどちらを使いますか」 | 自己申告制53%・タイムカード34%・上司の現認25%(島根県53病院、2013年) |
| 前残業の扱い | 「始業前の情報収集は勤務時間に含めていますか。何時に来る人が多いですか」 | 始業前30分以上が日勤53.2%・2交替58.5%(医労連2017年、33,402人) |
| 記録を時間内に終える仕組み | 「病棟クラークや看護補助者は何人いますか。記録が終業時刻までに終わらないときはどう扱われますか」 | 不払い労働の業務1位が記録57.9%、訪問看護では74.1%(医労連2022年) |
| 委員会・研修 | 「委員会と院内研修は勤務時間内に行われますか。時間外なら手当は出ますか」 | 不払い労働として委員会15.4%・研修9.8%(医労連2022年) |
| 月平均の時間外 | 「この病棟の月平均時間外は何時間ですか。それは申告ベースの数字ですか」 | 病院回答の平均4.8時間(日本看護協会2025年、3,502病院)。本人回答では5時間以上が64.1%(医労連2022年) |
| 夜勤手当の方式 | 「夜勤手当は深夜割増込みの定額ですか、割増とは別に支給ですか」 | 深夜割増を含む定額52.0%・割増とは別に定額31.2%・割増のみで手当なし4.5%。二交代1回の定額は平均11,470円・中央値11,200円(日本看護協会2025年) |
| オンコール待機 | 「待機は月何回ですか。待機1回の手当と、出動したときの時間外はそれぞれどう払われますか」 | 病棟以外の携帯待機は月0回40.1%、3〜4回14.2%、5〜6回14.1%、7〜8回10.7%。出動0回が63.8%(医労連2022年) |
| 出典:島根県「平成25年度 県内病院における看護職員夜勤実態調査」(53病院)、日本医労連「2017年 看護職員の労働実態調査」(33,402人)、日本医労連・全大教・自治労連「2022年 看護職員の労働実態調査」(35,933人)、日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(3,502病院)。 | ||
答えが「申告してもらっています」「みなさん早めに来ますね」「基本的には時間内です」のように、方式ではなく慣行で返ってくる職場は、三田市民病院の事例でいう「台帳とタイムカードの食い違い」が起きやすい状態です。逆に「端末ログで管理し、申告と差があれば本人に確認します」「情報収集は始業時刻後に行う運用で、前倒しが必要な場合は時間外として付けます」のように、方式を即答できる職場は、少なくとも仕組みはあります。夜勤そのものの実態と求人票の夜勤表記の読み方は看護師の夜勤の実態、残業・休日・手当を全国平均と並べて読む方法は看護師の求人票の見方で扱っています。
面接でこれらを聞く順番と、聞きにくい項目を逆質問に組み込む形は看護師の面接で聞かれることと逆質問にまとめています。辞める理由の上位に人手不足と賃金が並ぶ実態は看護師が辞める理由の実態で、看護師の転職全体の流れは看護師の転職ガイドで整理しています。
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よくある質問
始業前の情報収集(前残業)の分は、あとから請求できますか?
始業時刻に申し送りを始めるために情報収集を済ませておくことが事実上求められ、上司もそれを前提に業務を組んでいるなら、病院の指示で動いている時間と見なされ、労働時間として請求の対象になります。やらざるを得ない準備の時間も労働時間に数える、というのが最高裁の判断です(三菱重工業長崎造船所事件)。三田市民病院では、神戸新聞の報道によると、早出の準備時間を労働時間に含めていなかったことを労基署が指摘し、病院が電子カルテの起動時刻などを基に未払い分を支払いました。実際に請求できるかは記録の有無と個別の事情で変わるので、弁護士か労働基準監督署に相談してください。
すでに辞めた職場の未払い残業代も請求できますか?
退職後でも請求できます。払われていない残業代は、3年さかのぼって請求できます(退職金は5年)。給料日ごとに3年の時効が進むので、在職中の記録(勤務表、電子カルテのログイン時刻、端末やPHSの記録、指示のメッセージ)を退職前に自分の手元に残しておくことが実務上の鍵になります。
訪問看護のオンコール待機は労働時間になりますか?
一律には決まりません。実際に作業をしていない時間でも、仕事から解放されていないなら労働時間に当たる、というのが最高裁の考え方です(大星ビル管理事件)。訪問看護については、判例解説によると、横浜地裁の判決(アルデバラン事件)が、緊急携帯を常時携行して呼ばれれば駆けつける待機時間を労働時間と認め、約1,055万円の支払いを命じたと伝えられています。待機中にどこまで行動が制約されているか(外出や飲酒の制限、応答までの時間、出動の頻度)が判断の材料になります。
自宅に持ち帰って書いた記録や、自主的な勉強の時間はどうなりますか?
持ち帰り仕事は、上司の指示や黙認のもとで業務を終わらせるために行ったものなら、労働時間と認められる余地があります。医労連の2022年調査では不払い労働の業務として持ち帰り仕事を挙げた人が11.8%、研修が9.8%でした。一方、完全に自由参加で、参加しなくても評価や業務に影響しない研修・自己学習は、労働時間に当たらないというのが一般的な理解です。参加が実質的に義務になっている委員会や研修は労働時間に当たると考えられます。
労働基準監督署に相談すると、職場に名前が伝わりますか?
労基署に相談しても、相談したことを理由に解雇や不利な扱いをすることは法律で禁止されています。相談の段階では匿名でも受け付けられ、調査を求める場合でも、相談した人の名前を職場に明かすかどうかは本人の意向が確認されるのが通常です。不利な扱いを受けた場合は、それ自体が法律違反になります。
参考:日本医労連・全大教・自治労連「2022年 看護職員の労働実態調査」/日本医労連「2017年 看護職員の労働実態調査」/日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」報告書/日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」ニュースリリース/島根県「平成25年度 県内病院における看護職員夜勤実態調査」/神戸新聞 2022年11月29日(三田市民病院)/Business Journal 2024年9月18日(大崎市民病院)/@DIME 判例解説(アルデバラン事件)/裁判所 裁判例検索 三菱重工業長崎造船所事件/同 大星ビル管理事件/e-Gov法令検索「労働基準法」(労働時間・休憩・割増賃金・時効)/同「労働安全衛生法」(労働時間の把握)