30秒でわかる結論
物件ごとに「用途・構造・規模・フェーズ・役割」を書く。「設計業務に従事」では何も伝わりません。階数と延べ面積を書けば、建築士法第3条のどの線引きの建築物を担当してきたかがそのまま伝わります。
設計と工事監理は分けて書く。建築士法上は別の業務で、記名する建築士が誰だったか(自分が設計者か、担当か)で責任の範囲が違います。
資格は制度の出どころごとに分ける。免許(一級・二級・木造)、建築士証(構造・設備設計一級建築士)、講習(管理建築士講習・定期講習)、他法の資格(建築施工管理技士)は同列に並べません。
この記事は建設・製造・物流の職種別ガイドの建築士編です。施工管理側の書類は施工管理の職務経歴書の書き方、施工管理・現場監督の転職先は施工管理・現場監督の転職先の選び方で別に扱っています。ここでは設計・工事監理を担う建築士に絞ります。
まず「設計」と「工事監理」を分けて書く
建築士の職務経歴書で最も多いのは、「◯◯設計事務所にて意匠設計業務に従事」で一行終わる書き方です。これでは、どの規模の建築物を、どのフェーズで、どの立場で担当したかが読めません。建築士法は設計と工事監理を別の業務として定義しています。同法第2条第6項は「設計」をその者の責任において設計図書を作成すること、第8項は「工事監理」をその者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することとしています。
この「その者の責任において」が書類で効いてきます。設計図書に記名するのは設計を行った建築士で(第20条第1項)、工事監理では、工事が設計図書のとおりでないと認めたときに施工者へ指摘し、従わなければ建築主に報告する義務(第18条第3項)と、終了時に結果を文書で建築主に報告する義務(第20条第3項)を負います。したがって職歴では、物件ごとに次の3つを区別して書きます。
- 設計者(記名)として担当したのか、設計者は別の建築士で担当者として図面を作成したのか
- 工事監理者だったのか、工事監理の補助(現場定例への同席・施工図の確認など)だったのか
- フェーズは基本設計・実施設計・確認申請・工事監理のどこからどこまでか
若手のうちは「担当」が大半で構いません。記名した物件が1件でもあれば、それを前に出します。
一級・二級・木造建築士の業務範囲の線引き(現行条文)
採用側が物件の規模を見る理由は、建築士法第3条から第3条の3が、建築物の用途・構造・規模によって設計・工事監理をできる建築士の種別を分けているからです。新築の場合の線引きを、現行の条文どおりに整理します。延べ面積・高さ・階数は建築基準法第92条の算定方法によります(建築士法第2条第10項)。
| 条文 | 新築するときに該当する建築物 | 設計・工事監理ができる建築士 |
|---|---|---|
| 第3条第1項第1号 | 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーディトリアムを有しないものを除く)、百貨店の用途で、延べ面積が500平方メートルを超えるもの | 一級建築士のみ |
| 同 第2号 | 木造の建築物(または部分)で、高さが16メートルを超えるもの、または地階を除く階数が4以上のもの | 一級建築士のみ |
| 同 第3号 | 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造の建築物(または部分)で、延べ面積が300平方メートルを超えるもの、高さが16メートルを超えるもの、または地階を除く階数が4以上のもの | 一級建築士のみ |
| 同 第4号 | 延べ面積が1,000平方メートルを超え、かつ、階数が2以上の建築物 | 一級建築士のみ |
| 第3条の2第1項第1号 | 上記以外で、第3条第1項第3号の構造(RC造・S造など)の建築物(または部分)で、延べ面積が30平方メートルを超えるもの | 一級または二級建築士 |
| 同 第2号 | 上記以外で、延べ面積が100平方メートル(木造は300平方メートル)を超えるもの、または階数が3以上の建築物 | 一級または二級建築士 |
| 第3条の3第1項 | 上記以外の木造の建築物で、延べ面積が100平方メートルを超えるもの | 一級・二級・木造建築士 |
| (該当なし) | 上記のいずれにも当たらない建築物(例:木造で延べ面積100平方メートル以下、かつ階数2以下) | 建築士の資格を要しない |
増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替は、その部分を新築するものとみなして同じ線引きを適用します(第3条第2項、第3条の2第2項、第3条の3第2項)。また都道府県は、条例で区域や用途を限って第3条の2の延べ面積(木造を除く)を別に定めることができます(同条第3項)。応急仮設建築物は対象外です(第3条第1項柱書)。
書類での使い方は単純です。物件ごとに構造・階数・延べ面積・用途を書く。それだけで、一級建築士でなければ設計できない建築物を設計者として担当したのか、二級の範囲の住宅を数多く回してきたのかが、条文を知っている読み手には伝わります。「一級の範囲の物件を担当」と自分で解説する必要はありません。
物件ごとに書く単位
各職歴の冒頭に所属の概要(事務所の種別・建築士事務所登録の別・所属部門の人数・主な用途分野)を置き、そのあとに担当物件を新しい順に表で並べます。1物件につき次の項目を揃えてください。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 用途 | 専用住宅・共同住宅・事務所・店舗・学校・病院・物流倉庫・工場など、建築基準法の用途区分に近い語で。複合なら「店舗併用住宅」「事務所・店舗複合」 |
| 構造 | 木造(在来軸組/枠組壁工法/CLT等)・RC造・S造・SRC造・混構造。免震・制振があれば併記 |
| 規模 | 地上階数(地階があれば地下階数も)・延べ面積・必要なら高さ。延べ面積は「約」を付けて概数でよい。前掲の線引き(300/500/1,000平方メートル、高さ16メートル、階数3・4)をまたぐかどうかが分かる精度で |
| 担当フェーズ | 企画・基本設計・実施設計・確認申請(構造計算適合性判定や各種認定申請を含むか)・工事監理・竣工後対応のうち、どこからどこまで。確認申請は提出先(特定行政庁か指定確認検査機関か)まで書くと実務の解像度が伝わります |
| 役割 | 設計者(記名)/主担当/担当/工事監理者/工事監理補助/管理建築士。チームなら人数と自分の位置(例:意匠4名のうち実施設計の取りまとめ) |
| 協働した専門分野 | 構造・設備(電気・機械)・積算・ランドスケープ・インテリアのどれと、自分がどう調整したか。構造設計一級建築士への法適合確認の依頼(第20条の2第2項)を自分が行ったなら明記 |
| 使用ソフト | BIM(意匠モデルの作成まで/干渉チェックまで)・2D CAD・構造計算プログラム・プレゼンテーション用の3Dツールなど一般名で。製品名は書かず、面接で聞かれたら答えます |
| 受賞・掲載 | 賞の名称・年・自分の関与(設計者として/担当として)を事実のみ。雑誌掲載も同様。「高く評価された」などの形容は不要 |
物件名・施主名は守秘に配慮して書く
建築士法には、建築士個人に守秘義務を課す条文はありません(秘密保持を定めているのは指定登録機関の役職員に関する第10条の8です)。ただし、所属事務所と発注者の設計受託契約には秘密保持の条項が入っているのが通常で、同法第21条の4は建築士の信用又は品位を害するような行為を禁じています。退職後に未公表の物件情報を書類に載せる行為は、この両方に抵触しうるものとして扱ってください。
実務上の書き方は次のとおりです。
- 事務所が竣工後に公表している物件、受賞や掲載で名前が出ている物件は、物件名を書いてよい
- 未公表・設計中・契約上の制約がある物件は、用途・構造・規模・地域で表す(例:「都内の私立大学校舎(RC造5階建て・延べ面積約6,000平方メートル)」)
- 施主名は原則書かない。発注者の区分(民間企業/学校法人/医療法人/公共)で足ります
- 図面や模型写真をポートフォリオに添える場合も同じ基準で判断し、迷う物件は前職の管理建築士に確認する
株式会社◯◯(一級建築士事務所/組織設計・所員約60名・意匠部門18名) 2020年4月〜2026年9月
【所属】意匠設計部。教育・医療施設を主とするチームに配属
【役割】担当(2020年4月〜2023年3月)→ 主担当(2023年4月〜2026年9月)
【業務】基本設計〜実施設計〜確認申請〜工事監理。工事監理は監理者(室長)の下で定例・検査に立ち会う補助として担当
■ 主な担当物件(新しい順・抜粋)
・私立中高一貫校 校舎棟(RC造一部S造・地上5階・延べ面積約7,200平方メートル/東京都)2024年6月〜2026年9月 実施設計〜工事監理補助/主担当(意匠チーム4名の取りまとめ、構造・設備との調整窓口、確認申請は指定確認検査機関へ提出、構造設計一級建築士への法適合確認の手配)
・地域医療支援病院 外来棟増築(S造・地上3階・増築部分の延べ面積約2,400平方メートル/神奈川県)2022年10月〜2024年5月 基本設計〜実施設計/担当(平面計画・各種申請図書の作成)
件数・面積・人数はあなた自身が担当した実績の数字であって、事務所の受注高や業界の平均ではありません。数字の拾い方は実績を数字に置き換える手順にまとめています。
転職先の類型と、評価される経歴の接続表
建築士の転職先は、同じ「設計職」でも誰のために、どの立場で、どのフェーズを担うかが類型ごとに違います。自分の物件表の中から、応募先の類型が知りたい経験を前に出してください。
| 応募先の類型 | 立場と仕事の特徴 | 書類で前に出す経歴 |
|---|---|---|
| 組織設計事務所 | 建築士事務所として設計・工事監理を受託。意匠・構造・設備が社内で分業し、公共・教育・医療・事務所など中大規模が中心 | 第3条の規模(RC・S造300平方メートル超、1,000平方メートル超など)の物件での実施設計・確認申請・工事監理の経験、構造・設備との調整役、プロポーザルや設計競技への参加実績 |
| アトリエ系設計事務所 | 主宰者の設計思想のもとで少人数が全フェーズを担う。住宅・店舗・小規模施設が中心で、構造・設備は外部と協働 | 基本設計から工事監理まで一貫して担当した物件、模型・図面表現、外部の構造・設備事務所との協働経験、ポートフォリオの質 |
| ゼネコン設計部 | 設計施工の一貫体制。施工部門・積算・技術研究と連携し、コストと工期を織り込んだ設計。工事監理は施工者と同一法人内で行う | 施工図・コストを意識した実施設計、施工者との調整経験、BIMによる干渉チェックや数量連携、大規模物件での分担設計の経験 |
| ハウスメーカー・工務店 | 自社の工法・仕様の範囲で住宅を多数設計。営業・施工・アフターと一体で、確認申請や各種認定申請も自社で回す | 年間の担当棟数、木造(在来・枠組壁・プレハブ系)の実施設計、確認申請と長期優良住宅・省エネ関連の申請実務、顧客との打合せ件数 |
| デベロッパー・発注者側(企業の建設部門・施設管理) | 自ら設計はせず、設計者・施工者を選定し、与条件の整理・設計の確認・コストと工程の管理を行う。建築主の立場で第24条の7の重要事項説明を受ける側 | 設計者としての経験に加え、与条件の整理・コスト管理・行政協議・テナントや利用者との調整。設計図書を読んで指摘できる根拠として、工事監理の経験 |
| 指定確認検査機関 | 建築基準法第6条の2により、国土交通大臣または都道府県知事の指定(同法第77条の18〜第77条の21)を受けて建築確認・検査を行う機関。確認検査を実施する確認検査員は、一級建築基準適合判定資格者の登録を受けた者から選任される(第77条の24第2項) | 確認申請の作成・審査対応の経験、法規の読み込み。一級建築基準適合判定資格者検定は一級建築士試験の合格者が受検でき(第5条第5項)、登録には建築行政・確認検査等に関する2年以上の実務が要る(第77条の58第1項)。検定合格・登録の有無を資格欄に |
| 官公庁の建築職 | 公共建築の営繕(企画・設計・工事監理・保全)や建築確認・指導の行政事務。発注者であり、特定行政庁の職員として法令を執行する立場 | 公共建築の設計・工事監理の経験、行政協議の経験、法令の運用に関する知識。採用は試験が中心なので、書類は職務経歴の事実を簡潔に |
| 不動産・内装・リノベーション | 既存建築物を扱う。用途変更・大規模の修繕・模様替の適法性の判断、既存不適格の整理、テナント工事の設計・監理 | 既存建築物の調査(建築基準法第12条の定期調査は一級・二級建築士または建築物調査員資格者証の交付を受けた者が行う)、用途変更や増改築の確認申請、検査済証のない建物への対応経験 |
| CM・PM | 発注者の側に立って、設計者・施工者の選定、コスト・工程・品質の管理を支援する。設計も施工もしない第三者の立場 | 設計と施工の両方の言葉が分かること。工事監理・コスト調整・工程管理の経験、発注方式(設計施工分離・一括・ECI等)に関わった実績 |
施工管理へ移る、または施工管理から設計へ戻る場合の類型の違いは施工管理・現場監督の転職先の選び方を参照してください。設計と施工管理の両方の経歴がある人は、物件表に「設計」「施工管理」の列を設けて同じ表に並べると、一貫して書けます。
資格の書き方
建築士の資格欄は、免許・建築士証・講習修了・他法の資格を分けて書くのが原則です。同列に並べると、読み手は重みを判断できません。履歴書の資格欄との整合は履歴書の資格欄の書き方、資格・スキル欄の構成は資格・スキル欄の書き方で確認してください。
一級建築士・二級建築士・木造建築士
一級建築士は国土交通大臣の免許(建築士法第4条第1項)、二級建築士と木造建築士は都道府県知事の免許(同条第3項)です。免許は各建築士名簿への登録によって行われ、免許証が交付されます(第5条第1項・第2項)。書類には「一級建築士 免許登録(20◯◯年◯月)」のように免許の種別と登録年月を書きます。二級・木造は「二級建築士(◯◯県)免許登録(20◯◯年◯月)」と都道府県名を添えます。試験合格年と登録年が違う場合は登録年で統一し、合格年は書きません。
登録番号は必須ではありません。応募先が本人確認を要する場合は免許証(または免許証明書)の提示や写しを求められるので、その時点で対応すれば足ります。二級から一級に進んだ人は両方を書き、職歴の側でどの期間をどちらの資格で働いたかが分かるようにします(第3条の規模の物件を設計者として担当したのが一級取得後であることが読める形に)。
構造設計一級建築士・設備設計一級建築士
いずれも建築士法第10条の3にもとづき、一級建築士として5年以上構造設計(または設備設計)の業務に従事したうえで登録講習機関の講習を修了し、国土交通大臣から建築士証の交付を受けた一級建築士です。免許とは別の証なので、「構造設計一級建築士証 交付(20◯◯年◯月)」と書きます。
職歴の側では、法律上の関与を具体的に書きます。構造設計一級建築士は、第3条第1項の建築物のうち建築基準法第20条第1項第1号・第2号の建築物の構造設計に関与し、他の一級建築士が構造設計を行った場合は構造関係規定への適合を確認します(建築士法第20条の2)。設備設計一級建築士は、階数3以上で床面積の合計が5,000平方メートルを超える建築物の設備設計について同様です(第20条の3)。「構造設計一級建築士として法適合確認を行った物件数」「意匠設計者として法適合確認を依頼した経験」のどちらの側かを書き分けてください。
管理建築士講習の修了
建築士事務所には、事務所ごとに専任の管理建築士を置かなければならず(第24条第1項)、管理建築士になれるのは建築士として3年以上の設計その他の国土交通省令で定める業務に従事したあと、登録講習機関の講習を修了した建築士です(同条第2項)。省令で定める業務は、設計・工事監理・建築工事契約に関する事務・建築工事の指導監督・建築物に関する調査または鑑定・法令に基づく手続の代理で、期間は通算できます(建築士法施行規則第20条の4)。
講習の修了と管理建築士であることは別です。資格欄には「管理建築士講習 修了(20◯◯年◯月)」と書き、実際に管理建築士として置かれていた期間は職歴の側に「管理建築士(20◯◯年◯月〜)」と書きます。管理建築士は受託業務の量と難易度に応じた期間の設定、担当建築士の選定・配置、所属建築士の監督などの技術的事項を総括する立場なので(第24条第3項)、その経験は所員数・年間の受託件数と一緒に書くと伝わります。
定期講習
建築士法第22条の2は、建築士事務所に属する一級・二級・木造建築士と、構造設計・設備設計一級建築士に、3年以上5年以内で国土交通省令が定める期間ごとの定期講習の受講を義務づけています。省令上の期間は、直近の講習を受けた日の属する年度の翌年度の初日から起算して3年です(施行規則第17条の36)。
資格欄には「一級建築士定期講習 受講(20◯◯年◯月)」と直近の受講年月を書きます。注意が必要なのは、受講義務は建築士事務所に属する建築士に限られる点です。ゼネコンの施工部門やデベロッパー、企業の建設部門など、建築士事務所の登録を受けていない部署に勤務していた期間は対象外なので、受講していなくても欠格ではありません。建築士事務所へ移る転職なら、入所前後に受講が必要になるため、「20◯◯年◯月 受講予定」と添えておくと話が早く進みます。
建築施工管理技士との併記
建築施工管理技士は建築士法ではなく建設業法第27条の技術検定にもとづく称号で、第一次検定の合格者が「技士補」、第二次検定の合格者が「技士」を称します(建設業法施行令第40条)。検定種目は建築施工管理のほか土木・電気工事・管工事・電気通信工事・造園・建設機械施工管理です(同令第37条)。建築士の資格欄とは根拠法が違うので、「1級建築施工管理技士(20◯◯年◯月)」と別の行に書き、監理技術者資格者証を持っていれば交付年月を添えます。施工管理側の資格の書き方の詳細は施工管理の職務経歴書の書き方にあります。
既存建築物の調査に関わる資格
建築基準法第12条第1項の定期調査(特定建築物の敷地・構造・建築設備の状況の調査と報告)は、一級建築士・二級建築士、または建築物調査員資格者証の交付を受けた者が行います。つまり一級・二級建築士は、資格者証がなくても調査者になれます。資格欄に書くのは、建築物調査員資格者証(同法第12条の2)や建築設備等検査員資格者証(第12条の3)の交付を受けている場合で、交付年月を添えます。定期調査・報告の実績そのものは、件数と建物用途を職歴の側に書いてください。既存建築物を扱う不動産・リノベーション系の応募先では、この実績が前に出ます。
建築設備士
建築設備士は建築士法第2条第5項で定義される国土交通大臣が定める資格で、建築士は延べ面積2,000平方メートルを超える建築物の建築設備の設計・工事監理で建築設備士の意見を聴くよう努めることとされています(第18条第4項)。設備系の経歴がある建築士は、免許とは別の行で取得年月を書きます。
設計と施工管理の相場:年収は同じ区分でも、求人倍率が違う
賃金の統計では、建築士(設計・工事監理)も建築施工管理も「建築技術者」という同じ区分に入り、年収の数字は同じです。違いが出るのはハローワーク求人統計の方で、建築設計と建築施工管理では求人倍率が大きく異なります。設計から施工管理やコンストラクション・マネジメントへ転じるかを考えるときの材料として、両方を並べました。
転職判断の物差し
建築設計(建築士)・建築施工管理の賃金・労働時間・求人倍率
賃金・労働時間は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(一般労働者・男女計・企業規模10人以上)、求人倍率と求人票の月給は同省の職業情報提供サイト job tag に掲載のハローワーク求人統計(令和7年度)。年収は「残業代込みの月給×12+年間賞与」の換算値です。
1. 平均の姿(この職種で働く人の真ん中あたり)
| 項目 | 建築設計(建築士) | 建築施工管理 |
|---|---|---|
| 年収(換算) | 679万円 | 679万円 |
| 残業代込みの月給 | 45.6万円 | 45.6万円 |
| 残業代を除いた月給 | 40.8万円 | 40.8万円 |
| 年間賞与 | 131.6万円 | 131.6万円 |
| 平均年齢 | 43.4歳 | 43.4歳 |
| 平均勤続年数 | 12.9年 | 12.9年 |
| 月の所定内労働時間 | 166時間 | 166時間 |
| 月の残業時間 | 17時間 | 17時間 |
| 集計対象の労働者数 | 373,320人 | 373,320人 |
| 有効求人倍率(令和7年度) | 2.83倍 | 8.62倍 |
| 求人票の月給(ハローワーク平均) | 33.8万円 | 34.2万円 |
求人票の月給は、ハローワーク求人に書かれた賃金(下限と上限の中間値)の平均で、残業代や賞与を含みません。「残業代込みの月給」より低く出るのが普通です。求人倍率は求職者1人あたりの求人数で、1倍を大きく超えるほど「選ぶ側」に立てます(全職業の平均は1.1倍・令和7年度・職業別集計の職業計)。 求人統計の職業区分は「建築設計技術者」・「建築施工管理技術者」です。
2. 会社の規模で変わる額(同じ職種でもここが分かれ目)
| 職種 | 企業規模 | 年収(換算) | 残業代込みの月給 | 年間賞与 | 月の残業 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 建築設計(建築士) | 1,000人以上 | 860万円 | 56万円 | 188万円 | 23時間 | 13.6年 |
| 100〜999人 | 659万円 | 44.8万円 | 122.4万円 | 23時間 | 11.7年 | |
| 10〜99人 | 585万円 | 40万円 | 105万円 | 10時間 | 13.4年 | |
| 建築施工管理 | 1,000人以上 | 860万円 | 56万円 | 188万円 | 23時間 | 13.6年 |
| 100〜999人 | 659万円 | 44.8万円 | 122.4万円 | 23時間 | 11.7年 | |
| 10〜99人 | 585万円 | 40万円 | 105万円 | 10時間 | 13.4年 |
3. 年齢別の年収(換算・万円)— 自分の年齢帯の列を見る
| 職種 | 20-24 | 25-29 | 30-34 | 35-39 | 40-44 | 45-49 | 50-54 | 55-59 | 60-64 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 建築設計(建築士) | 411 | 551 | 636 | 710 | 747 | 765 | 808 | 880 | 743 |
| 建築施工管理 | 411 | 551 | 636 | 710 | 747 | 765 | 808 | 880 | 743 |
4. 経験年数別の月給(残業代を除く・万円)— 転職直後に提示されやすい帯
| 職種 | 0年 | 1〜4年 | 5〜9年 | 10〜14年 | 15年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築設計(建築士) | 29.1 | 31.6 | 36.1 | 41 | 48.4 |
| 建築施工管理 | 29.1 | 31.6 | 36.1 | 41 | 48.4 |
「経験年数」はその職種での通算年数で、会社を変えてもリセットされません。「0年」はその職種に就いたばかりの人の額です。
この数字の読み方
- 組織設計事務所やゼネコンの設計部は表2の1,000人以上の列、アトリエや地場の設計事務所は10〜99人の列が近い姿です。同じ一級建築士でも、所属先の規模で月給も賞与も大きく違います。
- 表3で年収が50代後半まで上がり続けるのは資格職の特徴です。管理建築士として事務所を預かる立場に進むかどうかで、その後の線が変わります。
- 設計の求人倍率が施工管理より低いということは、設計は応募者側に競争があるということです。書類では物件リストと担当範囲の具体性で差をつけます。
出典・取得日
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第1表・第5表・第14表(e-Stat) (2026年3月24日公表)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag(ハローワーク求人統計データ 令和7年度) (職業ごとの求人賃金・有効求人倍率)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」参考統計表 (職業別の有効求人倍率)
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果確報」 (産業別の労働時間・出勤日数)
取得日 2026年10月18日。統計の職業区分は記事の職種と完全には一致しません。各社の求人票の数字を読むための物差しとして使ってください。
転職理由は不満ではなく「次にしたい設計の形」に変換する
書類の転職理由は一行で足ります。不満を並べるのではなく、次の職場でどの設計をしたいかに置き換えます。面接で深掘りされたときに事実として説明できる範囲で書いてください。
| よくある理由 | 書類に書く形 |
|---|---|
| 長時間労働 | 「受託業務の量と期間が組織として管理されている環境で、実施設計の精度に時間を使いたい」。応募先の管理建築士が第24条第3項の業務量・期間設定をどう運用しているかを面接で聞く前提で書く |
| 設計以外の業務が多い(営業同行・積算・アフター対応) | 「設計と工事監理に業務を集中し、担当する建築物の規模と用途を広げたい」。これまでの兼務は、顧客折衝やコスト感覚として職歴には残す |
| 意匠と構造・設備の分業が固定的 | 「構造・設備と基本設計の段階から協働し、架構や設備計画を含めて建築全体を設計したい」。協働の経験が少ない場合は、法適合確認の依頼や設備との調整の経験を具体に書く |
| 年収 | 書類には書かない。報酬は面接以降の条件交渉で扱う。書くなら「主担当・管理建築士として負う責任の範囲に応じた評価のある環境」と役割の側から |
| 将来の独立 | そのまま書くと短期離職を懸念される。「管理建築士の要件となる設計等の実務と、受託から引渡しまでの事務所運営を一通り経験したい」と、応募先で得たい経験の側から書く。時期は書かない |
在籍期間の短い職歴が複数ある場合は転職回数が多い場合の履歴書の書き方を参考に、職歴ごとに「何を担当して何を身につけたか」を一行で揃えます。
記入例:ハウスメーカーの設計から組織設計事務所へ
■ 職務要約
住宅メーカーの設計部門で6年間、木造住宅の実施設計・確認申請・工事監理を担当しました。在来軸組と枠組壁工法の2階建てを中心に、直近2年は3階建て共同住宅と鉄骨造の店舗併用住宅を主担当として実施設計から工事監理まで一貫して担当しています。構造・設備と基本設計の段階から協働し、教育・医療など不特定多数が利用する建築物の設計に関わりたいと考え、組織設計事務所への転職を希望しています。
■ 保有資格
2022年12月 一級建築士 免許登録
2018年10月 二級建築士(◯◯県)免許登録
2025年2月 一級建築士定期講習 受講
2016年8月 普通自動車第一種運転免許
■ 職務経歴
株式会社◯◯ホーム(一級建築士事務所/注文住宅の設計施工・設計部門12名) 2020年4月〜現在
【所属】設計部 ◯◯支店設計課
【役割】担当(2020年4月〜2024年3月)→ 主担当(2024年4月〜現在)
【業務】プラン確定後の実施設計、確認申請(指定確認検査機関へ提出)、長期優良住宅・省エネ関連の認定申請、工事監理(着工から竣工まで、上棟・中間・完了の各段階で現場確認)
主な担当物件(新しい順・抜粋)
・店舗併用住宅(S造・地上2階・延べ面積約350平方メートル)2025年4月〜2026年3月 実施設計〜確認申請〜工事監理/主担当・設計者として記名。構造は外部の構造設計事務所と協働し、構造設計一級建築士への法適合確認を手配
・共同住宅(木造枠組壁工法・地上3階・延べ面積約480平方メートル・12戸)2024年4月〜2025年3月 実施設計〜工事監理/主担当。防火規定の整理と避難計画を担当
・専用住宅(木造在来軸組・地上2階・延べ面積約110〜140平方メートル)2020年4月〜2024年3月 実施設計〜確認申請〜工事監理/担当。年間14〜18棟を担当し、うち認定長期優良住宅の申請を年10件前後
【その他】設計課の実施設計図の標準詳細図の改訂(2023年度、矩計図・納まり図の見直しを3名で担当)/新入社員2名の図面指導(2024年度〜)/BIMによる意匠モデル作成の社内試行に参加(2025年度)
この例では、二級の範囲の住宅から始まり、一級取得後に第3条の2第1項第2号(階数3以上)の共同住宅と、第3条第1項第3号(S造で延べ面積300平方メートル超)の店舗併用住宅を設計者として担当したことが、物件表の規模からそのまま読み取れます。組織設計事務所が確認したいのは、中大規模の実施設計に耐える図面の精度、外部の構造・設備との調整経験、確認申請の実務です。年間棟数の多さは、実施設計の速度と確認申請の手数の裏づけとして機能します。
書く前のチェックリスト
- 物件ごとに用途・構造・階数・延べ面積・担当フェーズ・役割を書いたか(「設計業務に従事」で終わっていないか)
- 設計と工事監理を分け、設計者として記名した物件と担当として関わった物件を区別したか
- 未公表の物件は用途・構造・規模・地域で表し、施主名を書いていないか
- 免許は種別と登録年月で書き、二級・木造は都道府県名を添えたか。登録番号を無理に書いていないか
- 構造設計・設備設計一級建築士は「建築士証 交付」、管理建築士は「講習 修了」と「管理建築士として置かれた期間」を分けたか
- 定期講習は直近の受講年月を書き、建築士事務所に属していなかった期間は受講義務の対象外と理解しているか
- 建築施工管理技士など他法の資格は別の行にしたか
- 使用ソフトは一般名で書いたか。受賞・掲載は事実のみか
- 転職理由は一行で、不満ではなく次にしたい設計の形になっているか
- 書いた面積・棟数・件数を、面接で口頭で説明できるか
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よくある質問
一級建築士と二級建築士で、職務経歴書の書き方は変わりますか?
書く項目は同じですが、担当した物件の規模を書く意味が違います。建築士法第3条は、学校・病院・劇場・百貨店などの用途で延べ面積500平方メートルを超えるもの、木造で高さ16メートル超または地階を除く階数4以上のもの、鉄筋コンクリート造・鉄骨造などで延べ面積300平方メートル超・高さ16メートル超・地階を除く階数4以上のもの、延べ面積1,000平方メートル超かつ階数2以上のものを新築する場合の設計・工事監理を一級建築士に限っています。物件ごとに用途・構造・階数・延べ面積を書けば、どの線引きの建築物を担当してきたかが採用側にそのまま伝わります。
守秘義務のある物件名や施主名は職務経歴書に書けますか?
建築士法には建築士個人の守秘義務を定めた条文はありませんが、所属事務所と発注者の契約には秘密保持の条項が入っているのが通常で、同法第21条の4は建築士の信用や品位を害する行為を禁じています。公表されていない物件は、物件名や施主名の代わりに「都内の私立大学校舎(RC造5階建て・延べ面積約6,000平方メートル)」のように用途・構造・規模・地域で表します。竣工後に事務所が公表している物件や、受賞・掲載で名前が出ている物件は書いて構いません。
免許の登録番号は書くべきですか?
必須ではありません。建築士法第5条により、免許は一級・二級・木造の各建築士名簿に登録することで行われ、免許証が交付されます。書類には「一級建築士 免許登録(20◯◯年◯月)」と免許の種別と登録年月を書けば足り、応募先が確認したい場合は免許証の提示や写しの提出を求められます。二級建築士・木造建築士は都道府県知事の免許なので、免許を受けた都道府県名を添えます。
定期講習を受けていない期間があります。どう書けばいいですか?
受講義務の有無を先に確認します。建築士法第22条の2の定期講習は、同法第23条第1項の建築士事務所に属する建築士が対象で、期間は施行規則第17条の36により直近の講習を受けた日の属する年度の翌年度の初日から3年です。ゼネコンやデベロッパーなど建築士事務所の登録を受けていない部門に勤務していた期間は対象外なので、受講していなくても問題ありません。資格欄には直近の受講年月を書き、建築士事務所へ移る場合で期限が近いなら「20◯◯年◯月 受講予定」と添えます。
管理建築士講習は修了しましたが、管理建築士になったことはありません。どう書けばいいですか?
講習の修了と管理建築士であることは別なので、分けて書きます。建築士法第24条第2項の管理建築士は、建築士として3年以上の設計その他の業務に従事したうえで登録講習機関の講習を修了した建築士で、建築士事務所ごとに置かれて初めて「管理建築士」です。資格欄には「管理建築士講習 修了(20◯◯年◯月)」と書き、実際に置かれていた期間があれば職歴の側に「管理建築士(20◯◯年◯月〜20◯◯年◯月)」と書きます。修了だけでも、事務所登録の要件を満たせる人材として読まれます。
参考:e-Gov法令検索「建築士法」第2条・第3条・第3条の2・第3条の3・第4条・第5条・第10条の3・第18条・第20条・第20条の2・第20条の3・第21条の4・第22条の2・第23条・第24条・第24条の7/同「建築士法施行規則」第17条の36・第20条の4/同「建築基準法」第5条・第6条の2・第12条・第12条の2・第12条の3・第77条の18・第77条の21・第77条の24・第77条の58/同「建設業法」第27条/同「建設業法施行令」第37条・第40条